弁護士コラム:人身傷害特約

東京オリンピックの年,2020年の年が明けました。みなさま,明けましておめでとうございます。

 

このブログを見ていただいている方は,被害者の方かその周りにいる方が多いだろうと思います。

昨年末あたりから関わっている案件で,自分が入っている保険の関係で大変な状況になっていらっしゃる方がおいでになりますので,簡単にご紹介するとともに,みなさまに自動車保険の契約にあたっての注意点を簡単に指摘したいと思います。

 

事案は,自転車で脇道から広路(優先道路)に進出して事故にあって重傷を負ったというケースです。この事案では,自転車を運転していた被害者に40%の過失が原則としてあり,飛び出しであるとか,夜間であるとかの事情により,その過失がさらに大きくなる可能性があります。損害賠償の場面では,損害賠償の総額からまず過失割合分が減額され,さらにそこから既払の額が引かれてしまうため,重傷であればあるほど,治療費等の既払額が大きいことから,被害者の被る不利益は大きくなります。

 

上記の事案では,保険契約が会社名義であったため,人身傷害特約の適用が認められず,被害者は今後少ない賠償額を甘受せざるを得ないことになる見込みです。

 

私のブログでは何回かこの人身傷害特約に触れてきましたが,今回はまずみなさまの入っている保険に人身傷害特約がきちんと付保されているか,確認をお願いしたいと思います。

 

その上で,
(1) 契約自動車について,会社を契約者としてしまうと,会社代表者の家族などが人身傷害特約の対象になりませんので,他に人身傷害保険の付保されている自動車保険がない場合,契約者を個人にするなどの検討をお願いします。

(2) 人身傷害特約の適用が契約自動車に搭乗中の場合に限定されている場合,重傷事案となることが多い歩行中又は自転車運転中の事故にこの特約は適用されません。自動車事故全般に適用されるようにして下さい。

(3) 重大事故の場合,損害賠償額の総額が2億とか,3億になる場合もあります。仮に2億として,先程の例ですと,過失割合分が8000万円となります。人身傷害特約の保険金額は3000万円とされている場合が多いですが,これでは上記の過失分には足りません。そこで,できれば「無制限」としておくことをお勧めします。保険料がそれ程高くなることはないと思いますので,保険会社又は保険代理店とご相談下さい。

(4)その他,人身傷害特約の対象を,運転者又は記名被保険者に限定したりするような特約も時々あります。万一に備えての保険ですから,適用を妨げるような特約はできるだけ外して下さい。

 

以上,年明けにあたり,くどくどと書いてしまいましたが,みなさまの保険料を増加させるような話を保険会社又は保険代理店が勧めることはあまりないと思います。みなさまの方で注意し,契約内容を適宜変えていくことが必要です。保険証券に記載のある番号に電話すれば,それ程手間をかけずに,変更できるはずです。

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